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「わたしの生涯はむだではない」

 エミリー・E・ディキンソン
(Emily Elizabeth Dickinson/1830ー1886)は、若いころ失恋の痛手を負い生涯独身で通した女性ですが、心にひびく数多くの詩を残しています。詩人として評価されたのは彼女が亡くなった後ですが、彼女の詩は今でも多くの人に愛され、読まれています。



 下の詩は新潟の敬和学園を創立した太田俊夫先生が愛誦していた「生きがい」と題された詩です。この詩を読むたびに、泣き虫だった少年のころ、親に用事をいいつけられ自転車ででかけた時のことを思い出すといいます。



   もしわたしが一人の心を傷心に陥らせないようにすることができるなら

   わたしの生涯はむだではないであろう
 

   もし一人の生命の苦悩をやわらげることができるのなら

   あるいは一人の苦痛をしずめることができるなら

   あるいはまた、一羽の弱り果てている駒鳥を助けて

   その巣の中へ再びもどしてやることができるなら

   わたしの生涯はむだではないであろう 
 

   もしわたしが一人の心を傷心に陥らせないようにすることができるなら

   わたしの生涯はむだではないであろう


 冷たい風に吹き付けられ、強風にあおられて自転車もろとも投げ出されて、肩で押すようなかっこうで寒風に向かって坂道をのぼっていったとき、通りすがりのおじさんが、「えらいなあ、こんなに小さいのに。今になあ、こういう苦労が実になる時が来るよ。もう泣きなさんな。向こうに餅屋があるから、あそこまで元気を出して行って、暑いお茶でも飲んで休もうや」と一緒に励ましながら歩いてくれて、お茶と大福もちをごちそうてくれたというのです。



 そしてその見知らぬおじさんと出会った感激を今でも忘れられないというのです。その慰めの言葉をかけてもらった太田少年が、子どもたちを生かす素晴らしい教育者になったことは言うまでもありません。